依存性注入（DI）とは？KotlinとHilt・Koinで実践【Kotlin入門⑯】

依存性注入（DI）とは？
1. DIの概要
2. DIの基本概念
Hiltによる依存性注入
Koinによる依存性注入
HiltとKoinの比較
まとめ

依存性注入（DI）とは？

DIの概要

依存性注入（Dependency Injection, DI）とは、オブジェクトの依存関係を外部から注入する設計パターンです。DIを活用することで、以下のメリットが得られます。

コードの再利用性向上：異なるコンポーネント間での依存関係を分離できる。
テスト容易性の向上：モックやスタブを簡単に差し替えられる。
保守性の向上：依存関係を明示的に管理しやすくなる。

DIの基本概念

DIには主に以下の3つの方法があります。

コンストラクタインジェクション（推奨）
フィールドインジェクション
メソッドインジェクション

Kotlinでは、主に コンストラクタインジェクション が推奨されます。

class Engine
class Car(private val engine: Engine) {
    fun start() {
        println("Car is starting with engine: $engine")
    }
}

この例では、Car クラスのコンストラクタで Engine インスタンスを受け取り、依存性を注入しています。

Hiltによる依存性注入

Hiltとは？

Hiltは、Googleが提供する Dagger ベースの依存性注入フレームワークで、AndroidアプリのDIを簡単に実装できます。

Hiltのメリット

公式サポート：GoogleがAndroid向けに最適化。
コードの簡潔化：Daggerよりも設定がシンプル。
ライフサイクルに統合：ActivityやFragmentに簡単に適用可能。

Hiltのセットアップ

build.gradle.kts に以下を追加します。

dependencies {
    implementation("com.google.dagger:hilt-android:2.40.5")
    kapt("com.google.dagger:hilt-compiler:2.40.5")
}

アプリの Application クラスに @HiltAndroidApp を追加します。

@HiltAndroidApp
class MyApplication : Application()

Hiltを使った依存性注入

モジュールの定義

Hiltでは、@Module と @InstallIn アノテーションを使って依存関係を提供します。

@Module
@InstallIn(SingletonComponent::class)
object AppModule {
    @Provides
    fun provideEngine(): Engine {
        return Engine()
    }
}

コンストラクタインジェクション

@Inject アノテーションを使用して依存性を注入できます。

class Car @Inject constructor(private val engine: Engine) {
    fun start() {
        println("Car is starting with engine: $engine")
    }
}

Activityへの注入

ActivityやFragmentで @AndroidEntryPoint を追加し、依存性を注入できます。

@AndroidEntryPoint
class MainActivity : AppCompatActivity() {
    @Inject lateinit var car: Car
    
    override fun onCreate(savedInstanceState: Bundle?) {
        super.onCreate(savedInstanceState)
        car.start()
    }
}

Koinによる依存性注入

Koinとは？

Koinは、シンプルなDIフレームワークで、コードのボイラープレートを最小限に抑えられるのが特徴です。

Koinのメリット

シンプルなAPI：アノテーション不要。
設定が簡単：Hiltよりも導入が容易。
軽量：Kotlinネイティブにも対応。

Koinのセットアップ

build.gradle.kts に以下を追加します。

dependencies {
    implementation("io.insert-koin:koin-android:3.1.4")
}

アプリの Application クラスで Koin を初期化します。

class MyApplication : Application() {
    override fun onCreate() {
        super.onCreate()
        startKoin {
            androidContext(this@MyApplication)
            modules(appModule)
        }
    }
}

Koinの使用方法

モジュールの定義

Koinでは module を使用して依存関係を提供します。

val appModule = module {
    single { Engine() }
    factory { Car(get()) }
}

Activityへの依存性注入

by inject() を使用すると、簡単に依存関係を取得できます。

class MainActivity : AppCompatActivity() {
    private val car: Car by inject()
    
    override fun onCreate(savedInstanceState: Bundle?) {
        super.onCreate(savedInstanceState)
        car.start()
    }
}

HiltとKoinの比較

比較項目	Hilt	Koin
設定の簡単さ	やや複雑	シンプル
パフォーマンス	高速（Daggerベース）	やや低速（リフレクション使用）
Kotlinネイティブ対応	なし	あり
ボイラープレートの量	多め	少なめ